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ギャラリー【OVER THE BORDER】スペシャリストと巡る旅【Cultra】で新しいアートを探るアートラボのBlogです 

札幌国際芸術祭2014レポート2

先日レポートした札幌国際芸術祭2014、会期は9月28日で終了してしまったのですが、
芸術祭の終幕後も楽しめる、札幌ならではの経験をした!と心に残る空間と作品をご紹介いたします。
 
モエレ沼公園
 

 

 

 
イサム・ノグチのデザインで造られた公園は言わずと知れた名スポットですが、驚きの経験になること間違い無しです。
こんなに絵に描いたかのような山形の「モエレ山」にあっと言う間に登り、広い視界に圧倒される山は自然の多い札幌でも、他には無いのではないでしょうか。
不燃ごみと公共残土で造られた人工物というからなお驚きです。
身体のスケール感を変えてしまう公園は、札幌の中心街から車で30分ほどの場所にあり、市民から親しまれています。
 
赤れんが特別展示
明治21年に建てられた煉瓦づくりの建築、北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)の中では芸術祭期間中、赤れんが特別展示「伊福部昭・掛川源一郎」展が行われていました。
展示は終了しましたが、赤れんが庁舎は普段から一般公開され、ガイドの方から説明を聞くこともできます。
 

 
こちらの会場で行われていた特別展示はこの歴史ある庁舎にふさわしい、北海道ならではの貴重な内容でした。
ゴジラの映画音楽でも知られる、釧路市が輩出した作曲家、伊福部昭に関する展示では直筆の楽譜や本人の手紙や原稿などの資料が展示されていました。
もう一つの展示空間では、室蘭市生まれの写真家、掛川源一郎の写真や資料を見ることができました。
掛川源一郎の写真の中ではアイヌ民族の儀式や、入植者たちの姿が生き生きと写しだされていました。
 

《シマフクロウのイオマンテ》写真文化首都 北海道「写真の町」東川町蔵
空間デザイン:オリバー・フランツ(silent.代表)©掛川源一郎写真委員会
提供:創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会 Photo:Keizo Kioku
 
土門拳のリアリズム写真に影響を受けて写真を始めたと言う掛川源一郎の写真群には、北海道の土地の様々な光景のありのままが収められています。
入植者として北海道に生きる家族を24年間に渡って撮影した写真群や、アイヌ民族の儀式を写しだしたものなど、北海道に生きた人々の様子がありありと記録されています。
1900年代以降途絶えていた儀式を、9年の構想期間を経て1983年に再現した際の「シマフクロウのイオマンテ」という写真群からは、長らく途絶えた儀式の復活の瞬間に立ち会う緊張感が伝わってきました。
こうした伝統が息づく土地だと意識することで、札幌の街が他のどの土地とも違う特別な顔を持っているように感じます。
 
松江泰治による「JP-01 SPK」
 
次にご紹介したい、札幌ならではと感じた作品がこちらです。
 

松江泰治<JP-01 SPK>2014 © TAIJI MATSUE Courtesy of Taro Nasu
提供:創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会 Photo:Keizo Kioku
 
松江泰治の写真は、各地を地表として俯瞰、あるいは情報を集積する目的として撮影したかのような視点で捉えます。
均一な光で影を排除し、フレームの中に地平線の無い写真はただただそこにある、「事実」として存在します。
こうした視点で知っている街を見ると、どのように見えるのでしょうか。普段意識することのできない視点を得ることでできる経験こそ、芸術の醍醐味です。
 
こちらの写真が収められた「JP-01 SPK」という札幌の都市を表すコードを題にした写真集は現在赤々舎から発売中です。
写真集で見た場所に訪れてみるのも、意外な驚きに溢れる経験になるかも知れません。
 
以上、札幌国際芸術祭2014の終幕後も楽しめるスポットや作品をご紹介いたしました。
何度でも訪れたくなる札幌の、アートな視点を持った旅にお役立てください。

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札幌国際芸術祭2014レポート

みなさんこんにちは。
今年初めての開催となった札幌国際芸術祭2014にArtLABも駆け込みで取材に行ってまいりました。
初めて北海道に降り立ち、札幌という土地に全く疎いスタッフが短い時間の中で芸術祭を堪能すべく、メイン会場のみを駆け足で回った鑑賞記録をレポートいたします。

 
羽田空港からおよそ1時間半、あっという間に新千歳空港に到着します。
新千歳空港から札幌都心行きのバスを利用し、順調に道立近代美術館へと到着いたしました。

北海道立近代美術館は1977年に札幌の中心に開館した、市民に親しまれる美術館です。
清潔感のある外観に一歩入ると、意外にも重厚な雰囲気が広がっています。
少し時代を感じさせるとともに、ほっとする雰囲気があるエントランスです。

札幌国際芸術祭のメインとも言えるであろうこちらの道立近代美術館、稀に見る質の良い作品展示を見ることができました。
まず印象深いのがこちらの作品。
インド人アーティスト、スボード・グプタによる「ライン・オブ・コントロール(1)」です。

雑多な物で形成された禍々しいきのこ雲のようなこの作品は、主にステンレスの日用品で構成されています。
伝統的に用いられてきた真鍮や銅の食器や儀式用の品々に代わって、日常を独占するステンレス用品で作られたきのこ雲は重厚感のある近代美術館の中で、静かに佇んでいました。
かなりストレートに社会問題に言及した作品ですが、食器たちが丁寧に積み重ねられているからなのか、意外にも物体としての魅力に溢れ、いつまでも眺めていたくなるような温かみもある印象を受けました。
 
そしてもう一点、すぐ隣にあるアンゼルム・キーファーによる「メランコリア」もまた、この吹き抜けの空間で遺憾なく魅力を発揮していました。

通常、福岡市美術館で所蔵されているこちらの作品は、札幌国際芸術祭という文脈において、という以上に作品自体の力で道立近代美術館でも様々な時間の流れや歴史についての風格を漂わせているのを感じました。
 
2つの大きな作品を後にして螺旋階段を登ったところに、畠山直哉の写真群が待っていました。


 

 

最盛期を通り過ぎた炭鉱の町を撮影した写真たちは、正に「近代」を捉えた展示です。
こちらの壁面も吹き抜け部分に面しており、厚みのある美術館の建物と写真の内容が同じ方向を向いているような、展示空間の完成度を感じました。
 
この後、突然雪の結晶を作る明るい実験室にたどり着きます。
カールステン・ニコライによる「snow noise」は人工雪を作る様子を展示しています。
カールステン・ニコライはこの後訪れる芸術の森美術館で全く別の作品を展示しています。そちらでは鏡面に囲まれたプロジェクターで激しく明滅する映像体験をすることになるのですが、こちらでは静かに雪が結晶を実らせていく姿を観察することができます。
 
この後、中谷宇吉郎の研究成果である雪の結晶、火花放電の写真展示を高谷史郎が手がけた展示に連なって、高谷史郎本人による、中谷宇吉郎へのオマージュ作品「Ice Core」も展示されていました。

 

この作品は中谷宇吉郎の回顧展がラトビア国立自然史博物館で開催された際に、展示された作品ということです。
中央、上から下に流れていく白い物体は2005年に掘削された氷床コアの一部で、右側の数字はその氷がもといた深度(単位:mm)を表し、左側の数字はその氷の年代(単位:○年前)を表しているそうです。
自然科学的な資料を羅列されているだけにも関わらず、映像に目が釘付けになってしまうかっこ良さはさすが、としか言いようがありません。
 
かなり駆け足でしたが近代美術館の展示についてのご紹介は大まかに以上となります。
大御所作家の有名作品を一度に見ることのできる特別な様子を目の当たりにし、札幌国際芸術祭、なかなかやるな・・・。という印象で今度は次なるメイン会場、札幌芸術の森美術館に向かいます。
 
札幌国際芸術祭開催期間中は、近代美術館から無料のシャトルバスが出ています。バスに揺られること約40分、かなり都会の中心からは外れたな、、という心細さも募る頃、札幌芸術の森美術館に到着します。
芸術の森美術館に着いた瞬間にここが試される大地であることを思い知らされます。
とにかく、寒いです。これから訪れる方、大げさじゃないか、という服装で挑んでください。
都合により遅い時間にスタートしたため向かっている途中で日が暮れてしまい、外観等の写真を撮ることができませんでした。
 
さて、最初にご紹介するのはエントランスのすぐにある、砂澤ビッキの作品、「風に聴く」です。
 

 
普段、現代美術館などを訪れているとあまり目にすることのない種類の作品ですが、素朴な風合いに意外にも惹かれるものがありました。何か実用的な道具のような、あるいは手を差し伸べてくる人の形のような、4つの木彫があちらこちらを向いている様子が可愛らしく感じる経験はあまり無かったので不思議な感覚です。
 
この後も森林に関する作品が続きます。
 

平川祐樹さんによる「Vanished Forest」は、見ての通り、頭上には森林を見上げたような映像が並び、覗きこむ形で切り株の映像が展示されています。
切り株の上にはキノコが生えたり蟻が這っていたりするのですが、肝心の樹木の幹が喪失している状態が作り出されています。
この作品の展示されている芸術の森美術館は、その名の通り森の中にあり、樹木に囲まれた場所にあるのですが、その建物の中で森林が喪失されたことがテーマの作品が展示されている、という状況にも不思議な感覚を覚えます。
 
そして宮永愛子さんの「そらみみそら(mine・札幌)」では、突然繊細な陶器が床に、そして錆びついた滑車の上に並べられています。
 

 
こちらの作品は、高温で焼きあげられた釉薬が冷やされていく過程でヒビが入る時に鳴る音の展示する、サウンドインスタレーションなのですが、いつ鳴るのか、その音を聴くことができるかは全く予想ができません。
その場にいらした美術館の方に、ヒビが入る(貫入)の音がどんな音なのか、詳しく根堀葉掘り聞き、しずしず周囲を歩き回り、それでも鳴らないので諦めようとした時に、ついに聴くことができました。釉薬にヒビの入る音は確かに細やかなのですが、意外にも力強い音がしました。固まりつつある釉薬を割る力が、徐々に徐々に溜まっていっていたものが爆発した瞬間に立ち会えたことがとても嬉しかったです。また、それまでの静かな空間の中にも、次に聞こえてくる貫入の音までの力を溜め込んでいる運動が行われているという想像を巡らせて初めて、札幌に流れる水の由来と都市の歴史がモチーフになっているということが理解できた気がしました。
 
松江泰治さんは「JP-01 SPK」というタイトルでそれぞれの季節の札幌の町を精密かつ均質に写した写真群を展示しています。
また、写真の向かいには、この写真がじわじわと動いて上空を移動しながら町を眺めているような気分になる映像が展示されていました。
 

 
地元の方と思われる方々が、食い入るようにこの写真たちを見つめ、被写体となっている景色に身近な建物や場所を見出しているのを目の当たりにすることで、より感慨深い作品でした。札幌や北海道に関連の深い作品が多く展示されていたので、きっと地元の人々は、観光客として外からやってきた私達とは違った感想を持つのだろうな、と、想像を膨らませました。地元の人たちにとって、今回の札幌国際映画祭2014は、どんな芸術祭だったのでしょうか。そんな視点を持つことも持つこともできます。
 
最後にしっかりと中谷芙二子さんによる霧の彫刻を見ることもできました。

 

旅行者の視点で味わう札幌国際芸術祭も、他では見られない良質な体験ばかりでした。
 
以上、北海道立近代美術館と札幌芸術の森美術館、二つの会場で札幌国際芸術祭を鑑賞したレポートでした。
訪れた方も、今回は逃してしまう方も、少し雰囲気を味わって頂ければ幸いです。
東京近郊で行われるアートフェスとはまた違った印象を受ける体験となりました。
札幌という土地ならではの文脈のある作品、そして東京近郊では中々見られない規模の美術館は、今回の札幌国際芸術祭の終了後も再び訪れたいと思う場所ばかりです。
 

 
Information
札幌国際芸術祭 2014
主な会場:北海道立近代美術館、札幌芸術の森美術館、札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)、北海道庁赤れんが庁舎、モエレ沼公園 ほか
※各会場ごとに開館時間(作品鑑賞時間)・定休日が異なります。詳しくはアクセスのページをご覧ください。
会期:2014年7月19日(土)〜 9月28日(日)
 
 
 

 
 
 

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クレマチスの丘レポート③IZU PHOTO MUSEUM

みなさんこんにちは。Art LABです。
3回にわたって紹介してきたクレマチスの丘のレポートも今日が最後です。
先日ご紹介したヴァンジ彫刻庭園美術館と同じクレマチス・ガーデンエリアにあるIZU PHOTO MUSEUM。
現在は、写真家・小島一郎の作品が展示されています。
 
 

 

 
クレマチスの丘全体に言えることですが、ここでももうひとつ気もちのいい空間に出会いました。そう、IZU PHOTO MUSEUM最大の特徴と言えば、杉本博司さんの建築です。
家などの住居空間にいると、心地よい空間というのは当たり前のことであり、建築に感謝、と改めて思うこともないのですが、美術館という非日常な空間に来ると、建築物の芸術的な心地よさに感謝の気持ちが芽生えます。
 

そんな建築物の中、行われている写真展は、小島一郎「北へ、北から」
「北へ、北から」と言うと、ついつい昨年流行した「あまちゃん」の潮騒のメモリーを思い出してしまったのですが、あの歌詞に負けず劣らず、この展覧会タイトルは、小島一郎の生き様を表すような3つの”北”が含まれているのだそうです。
元々青森県という、本州最北の県での活動をしていた小島さんですが、一時期、東京で活動していたこともあります。その後、青森へ戻ることになったことから、北から来て北へもどる、という“北”が1つ。
また、東京から帰郷した後は、もともと撮影していた津軽ではなく、青森の中でもさらに北の下北半島での撮影をするようになります。それが2つ目の、“北”。
さらにその後、北海道での撮影を目指し、青森からさらに北へ赴き撮影をした、というのが3つ目の“北”。
どんどん厳しい環境である北へ向かっていったその生きざまも含めて、「北へ、北から」というタイトルで表現しているのだそうです。
 

 

最初のエリア。絵画のように情緒あふれる作品が飾られています。
リアリズムが主流だった当時、このように情緒あふれる詩的な写真作品は、注目を集めたのだとか。すごくロマンチックな写真に見惚れてしまいます。
 

こちらはトランプ、と呼ばれていたと言う名刺サイズの写真たち。
1つの作品をつくるために、同じ構図で何枚も何枚も写真をとって1番いいものを選んで作品にしたそうで、編集の検討の為に、いつも胸ポケットに複数の”トランプ”がはいっていたのだとか。トランプが胸ポケットに入っているなんて、なんだかマジシャンのようなイメージを持ってしまいますが、写真の大きな特徴である過去を未来に残すことができる、ということを考えてみると、マジシャンのような印象も遠からず、という気もしてきます。
 

情緒感豊かな作品の部屋から一転、中間色を一切なくしたようなハイコントラストな世界へ。
この展覧会は個展のはずだけれど、別の作家さんかな?と思うような錯覚を覚えます。どちらにせよ、現実を写し取るというだけではなく、絵画的な構図へのこだわりをもって作品を作り上げていったのだということが伝わってきます。
カメラひとつでこんなに幅広い世界を表現できるなんて、やっぱりマジシャンのようだなあ、と感じたのでした。
 
 
3回にわたるクレマチスの丘レポートも本日でおしまい。
実際に行ってみると、本当に気もちよくて、まだまだ発信しきれていない魅力でいっぱいの場所です。
みなさんぜひ実際に訪れて、深呼吸してみてはいかがでしょうか。
 

 
Information
IZU PHOTO MUSEUM
小島一郎「北へ、北から」
[会期] 2014年8月3日(日)~12月25日(木)※水曜日定休(12月24日は開館)
[開館時間] 10:00~17:00(9・10月)10:00~16:30(11・12・1月)
[入館料]  大人 800円/高・大学生400円/小・中学生無料
 
 
 
 

 
 

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クレマチスの丘レポート②ヴァンジ彫刻庭園美術館

みなさんこんにちは。Art LABです。
クレマチスの丘レポート①で紹介したベルナール・ビュフェ美術館に続き、本日も同じくクレマチスの丘にある、ヴァンジ彫刻庭園美術館を紹介したいと思います。
ベルナール・ビュフェ美術館から歩いて15分。ヴァンジ彫刻庭園美術館では現在、イケムラレイコ「PIOON」が開催されています。 それでは早速ご覧下さい。
 
 

 

ビュフェ・エリアから、ヴァンジ彫刻庭園美術館のあるクレマチスガーデン・エリアまでは歩いて15分。隣接する駿河平自然公園を楽しみながら行くことができます。結構かかるし迷うかな、と思いきや、曲がり角には必ず看板が出ているので、指示に沿って歩いていくのみ。また、歩いて15分の自然豊かな土の道が、都会に住み慣れた人間にはとっても楽しく、あっという間に到着します。
 

そして、なんといってもこの吊り橋。めったにない機会に子どもも大人もはしゃぎ気味で渡る姿をちらほら見かけました。 とは言え、大雨の日など天候の悪い日はちょっとなあ、と思うかもしれませんが、ビュフェ・エリアから、クレマチスガーデン・エリアへは、バスも出ているので安心です。
 

ということで、あっと言う間に到着したヴァンジ彫刻庭園美術館ですが、入った途端に視界が開けて、とっても気もちのいい空間が広がります。 あまりの気持ちよさにしばしぼんやり。動きたくないなあという気持ちをぐっとこらえ、いざ館内へ。
 

 

全長3.4mもある陶の作品「うさぎ観音」。
”内と外”というのは、これまでにもイケムラさんが制作のテーマとしてあげてきたものの1つですが、そのテーマが示すようにこの作品の下半身は空洞で前が開き、胴体には無数の穴が開いていて、内と外の境界があいまいになっています。この静かな空洞を前にすると、この中に入ってみたいという思いにかられます。
内側から見る景色は、穴からこぼれ入る光が星のように見えて、静かな穏やかな夜にいるような気分になるのだろうな、と想像をめぐらせ、地球にいながら別の地球にいってしまうような、不思議な感覚を覚えます。内側も外側も地球だな、と思ったら、なんだかすごく大きくて深い優しいものに包まれているような気持ちになりました。
この観音が土でできているということが、土の上(外)に立って生きて、土の中に還っていく人間の摂理と重なっているように思えてきます。生と死と考えるとずいぶんと違うことのように思えるけれど、外も中もどちらも地球だと思うと、安心感に身を包まれます。
「うさぎ観音」が発する優しい祈り、ぜひ向き合ってみて頂きたいです。
 

 

展覧会であたたかいものを受け取り外へ出ると、これまた気もちいい光景が待っていました。緑の広がる丘で、鈴木康広さんの作品「屋根のベンチ」に群がる子ども達がいたり、ゆっくり散歩しているご夫婦がいたり、穏やかな空気が流れています。
 

 

のんびり歩みを進めていくと、なんだか小さな入り口を発見。
入ってみると、なんとも現実離れした空間になっていました。マイナスイオンの濃度を計りたくなる程の癒しスポットの出現です。ハーブティーなど癒し効果の高い飲み物が飲めるよう。お店のスタッフさんが、 クレマチスのお花にかこまれて、にこにこと今回の展覧会にあわせたお店の展示を説明して下さいます。ファンタジーかな?と思うような夢見ごこち空間。みなさまぜひお試しあれ。
何度でも来たくなるようなヴァンジ彫刻庭園美術館でした。
 

 
Information
ヴァンジ彫刻庭園美術館
イケムラレイコ「PIOON」
[会期] 2014年4月20日(日)─ 10月14日(火)※水曜日定休
[開館時間] 10:00~17:00(9・10月)10:00~16:30(11・12・1月)
[入館料]
大人1,200円/高・大学生800円/小・中学生500円(4月~10月)
大人1,000円/高・大学生500円/小・中学生無料※特別企画

展を除きます。(11月~3月)

 

 
次回はIZU PHOTO MUSEUM。
小島一郎さんの写真はもちろんのこと、杉本博司さんの建築もとっても素敵でした。またお楽しみに。
 
 

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目【め】ギャラリートーク@銀座資生堂ギャラリー

みなさんこんにちは、Art LABです。
先日こちらのブログでも紹介した展覧会「たよりない現実、この世界の在りか」のギャラリートークにお邪魔してきました。
8月3日、資生堂で行われた、アーティスト荒神明香さんと、ディレクター南川憲二さんによるトークの内容をレポートいたします。
これまでのお二人それぞれの活動紹介、「目【め】」としてのこれまでの活動紹介、そして現在開催中の展覧会「たよりない現実、この世界の在りか」について、という順番で進んだギャラリートーク。
親しみやすいエピソードを織り交ぜながらも、ところどころに繊細な感覚を元にした体験談や、作品の複雑な成り立ちを紹介する場面もある盛りだくさんの内容となっていました。

荒神明香さんのこれまでの活動紹介

まずは荒神さんからこれまでの作品のプロセスをお話されていたのですが、これが本当に、驚きの連続でした。作品に至るまでのきっかけとなった出来事がとても普通な出来事、あるいはとても繊細で小さな、すぐに忘れてしまいそうな発見であるにも関わらず、「それで、できた作品がこれです」と紹介される作品の印象の強さ、美しさに毎回驚かされ続けました。そのきっかけから、どうしてこうなるのか?分からないからこそ、荒神さんの作品がこれほど魅力的で、私達を惹きつけてやまないのではないでしょうか。


荒神明香さんの作品。左から<R.G.BB.G.R>、<reflectwo>
 
南川憲二さんの、wah documentとしてのこれまでの活動紹介
南川さんは「wah document」として、小学生をはじめとする色々な人から「やってみたい」ことを公募し、実行するという活動を行っていました。起こりそうにもない思いつきのようなアイデアが真剣に実行される様子を紹介するたび、会場は笑いに包まれました。

Wah documentの活動。
左から「先手」(横断歩道を待っている人を千手観音にしてしまうというもの)、「へび花火」(一万個のへび花火を同時に燃やす試み)

 
目【め】としての、これまでの活動紹介
それぞれ活躍していたお二人は、「目【め】」というグループとして2012年に活動を開始しました。
小豆島の「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」※1や、横浜の象の鼻テラスで行った鑑賞者参加型インスタレーション「FICTIONAL SCAPER」※2といった普通の日常から逸脱してしまう体験を逸脱するような試みを行っています。「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」では町の形や、家の形が頭の中で思い描く普通のものを超えてしまう空間体験を作り出し、「FICTIONAL SCAPER」では普段の自分ではない人生を演じ、公園の風景の一部にフィクションを生み出してしまいます。
いずれも「自分が自分じゃなくてもいい」という体験を試みることが根幹にあり、荒神さんにとっては小学生の時のある体験が元になっているそうです。それは、全校生徒全員で校庭に並んで撮影された時、ほんの小さくしか映らない自分の顔を想像して、普段は人見知りだったにも関わらず、精一杯の笑顔で写ってみようとした、という経験です。他の子と同じように写っているかのように見える荒神さんの写真は単なる笑顔ではなく、普段の自分を超えてみようと精一杯の笑みを試みた結果なのでした。
 
現在、目【め】のお二人は、宇都宮美術館の館外プロジェクトとして「おじさんの顔が空に浮かぶ日。」を行っています。荒神さんが中学生の時に見た夢(電車の中から、林の中に浮かぶおじさんの顔を見た)と、南川さんが文化事業プロジェクトについて町の人に話を聞いた際に「自分自身が参加する意味は、見つけられない」という意見が上がったことが元になり、町に住むおじさんの顔を集め、その中から一人の顔を空に浮かべようとしています。
 
また、現在開催中の横浜パラトリエンナーレに「世界に溶ける:リサーチドキュメント」として参加されている様子もご紹介頂きました。ヒアリングをもとに、自閉症の方が人に見せる為ではなく作った物や、行為した軌跡を公開するべきなのか、葛藤された経緯についてお話されていました。パラトリエンナーレでは、このリサーチを元にして目【め】のお二人が制作されたドローイングや写真が展示されています。(2014年9月7日まで開催)
 
「たよりない現実、この世界の在りか」展について
コンセプトについて、まとまってお話されていた部分をご紹介します。鑑賞される前の方にもネタバレにならない範囲で、この作品の核となる部分を抜粋しています。

荒神さん「幼稚園の時に、体操の時間に屋上で仰向けになる体操があり、その時に仰向けになるのが怖かったんです。目の前に空があって、なぜ空の方に落ちていかないのか、自分たちはなぜ地面に落ちないのか。落ちていかないか怖くて、隣にいる友だちの肩や背中が地面にくっついていることを確認しながらでないとその体操ができなかったという記憶があります。なぜ自分たちがここに留まっていられるかということをお母さんに聞いても、理由は分からないし、色々な情報を知れば知るほど不可解に思えて来た時に『自分が(空に)落ちない』ということを確かめることだけが、唯一、確かな真実だと気づいたのです。(中略)確かめなければ、何も無かったことになっていく。それが、自分たちの知覚している現実、この世界だ、と気づいて、そんな話を南川くんと一緒に、話していました」
 
南川さん「そういった、荒神さんの感覚をどうやって作品にするかが僕の役割になるのですが、最初に『体験させる』ことが良いのではないかと思っていました。鑑賞者の中に侵入するようなことができたらなと思うようになり、作品を組み立てていきました。」
 
荒神さんのお話は、どこかでそんな身体感覚が自分にも有るような気もしつつ、何のことを言っているのか分からないような気もしてきます。「確かめられたことだけが現実、確かめなければ、何も無かったことになる」というのは多くの情報に囲まれ、推測を重ねた前提の上で行動している日々の生活からは、逆に現実感の薄い言葉のようにも聞こえてきます。
しかし、訪れたことの無い場所に行く時、あるいは、今まで起こるはずの無かったことが起こった時、「自分の手で確かめられたことだけが現実、確かめなければ、何が起こるか分からない」状況を経験することになります。
いつもいる世界から離れて、自分の目と感覚だけを頼りに確かめ続けなければならない経験をしてしまうことで、これが「たよりない現実」だと、気付かされてしまうのかも知れません。
 
以上、ギャラリートークのレポートをお届けしました。
目【め】のお二人の絶妙なコンビネーションで笑いあり、真剣な表情ありのトークは初めて考えさせられたような話題も多く、とても充実した内容となっていました。今後の目【め】としての活動にますます注目していきたいと思いました。単純に楽しみにしている、というよりも、好奇心が抑えられずに注目してしまう、そんな魅力を持ったグループです。
「たよりない現実、この世界の在りか」展は8月22日まで銀座資生堂ギャラリーで開催中です。
 
※1「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」。小豆島の土庄本町に元から町にあった数軒の空き家たち(中には新しく作った空間も含むそうです)数軒が通常の玄関ではない、箪笥や冷蔵庫などから伸びる通路でつながっている作品。通路を出ると思いもよらない場所に出てしまう。入った場所と出る場所が全く違い、自分がこの町のどこにいるのか、混乱してしまうらしい。
※2「FICTIONAL SCAPER」この作品は多くの人が行き交う公園で、「自分ではない自分になる」という体験を5分だけすることができる、という参加型作品。難易度ややる気度をアンケートで確認後、用意された衣装を着て設定通りの人生を5分行ってもらう。「船長」や「植物研究者」、「式場から逃げてきた新婦」と「一緒に逃げている男性」など。
 
 

 
Information
「たよりない現実、この世界の在りか」
主催:株式会社 資生堂
会期:2014年7月18日(金)~8月22日(金)
会場:資生堂ギャラリー
〒104-0061東京都中央区銀座8-8-3東京銀座資生堂ビル地下1階
平日 11:00~19:00 日曜・祝日 11:00~18:00
毎週月曜休(月曜日が休日にあたる場合も休館)
入場無料
展覧会公式ページ(資生堂ギャラリー)
 
 
 
 
 

 

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