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ギャラリー【OVER THE BORDER】スペシャリストと巡る旅【Cultra】で新しいアートを探るアートラボのBlogです 

名和晃平さんインタビュー


こんにちは、ArtLABです。
今回ArtLABではCultraでもお世話になっている名和晃平さんにインタビューをさせて頂きました。
名和さんは現在、こちらのブログでもレポートをお伝えした「ミッション[宇宙×芸術]―コスモロジーを超えて」(東京都現代美術館)に出展されています。
出展中の作品、「Direction」、「Moment」、「Ether」シリーズについてたっぷりお話を伺ってきました。
作品をもう鑑賞された方も、これからという方も、より作品を楽しむためにぜひご覧になってみて下さいね。
 

 
名和 晃平 Kohei NAWA
1975年大阪府生まれ。
2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻修了。京都造形芸術大学准教授、2009年京都伏見区に立ち上げたクリエイティブプラットフォーム「SANDWICH」ディレクター。
2011年、東京都現代美術館で個展「名和晃平ーシンセシス」開催。その後も2013年の瀬戸内国際芸術祭、あいちトリエンナーレなど、数々の国際展にてサイトスペシフィックな彫刻作品を発表する。同年、韓国チョナン市に大規模な屋外彫刻 “Manifold” を設置。ビーズ、プリズム、発泡ポリウレタン、シリコーンオイルなど様々な素材とテクノロジーを駆使し、彫刻の新たな可能性を拡げている。
現在、京都を拠点に活動。
 

 
「ミッション[宇宙×芸術]―コスモロジーを超えて」に出展中の作品について
聞き手ArtLAB:ア
名和晃平さん:名
 
ア:東京都現代美術館で開催中の「宇宙×芸術」展を拝見しました。宇宙に関連した展示の中でも、名和さんの作品の空間はSFのセットの中に居るような神々しさ、無重力感が印象的でしたが、展示作品はどのようなコンセプトでお作りになられたのかお聞かせ下さい。

名:「Direction」、「Moment」、「Ether」シリーズは[宇宙×芸術]展を意図して制作したわけではありません。ただ、普段から作っている作品で十分宇宙に関するテーマに通じていると思い、この展示に参加しました。宇宙空間で作品を作る、という発想ではなく、今自分たちがいる、この地上が宇宙の一部だと考えて制作しています。宇宙の中の、ひとつの重力圏にたまたま我々がいて、地上にある物質を使ってコミュニケーションを図っているという風にラディカルに捉えていくと、もう一度宇宙という視点に立ち返って自分たちが居る場所や、リアリティを見つめ直せるのではないかと考えています。
自分が学生時代に習っていた先生が野村仁さんという、天体を彫刻のモチーフにして、「コズミックセンシティビリティ(宇宙感性)」というテーマのもと活動をされている方だったので、その影響はあると思います。宇宙の中に感性を持った存在がいる、それが地球上では生命として発達している。そういった捉え方で自分たちがこの地球上で生きているという事自体を彫刻の表現で捉え直せないかなと思い、制作に取り組んでいます。
 
ア:「Direction」はメイキング映像も展示されていましたが、線の描かれる過程の美しさに驚きました。
名:すごくシンプルな方法です。インクの粘度や成分とキャンバスの関係を見極めて、ベストな相性を見つければ、定規やマスキングを使わなくてもあれだけの直線が描けます。あれは、今僕達がいる空間の中に既にある線だとも言えます。物体が地面に向かって引き寄せられる現象、つまり、常に自分たちの身体が感じ続けている力が視覚的に表れた線ですよね。
 
ア:「Moment」も、円を描く、揺れによって出来ている線だと思いますが、メイキング映像を見ると、キャンバスを移動させている様子も見えました。手でコントロールして描いている部分も大きいのでしょうか?
名:自然に委ねるのと、それをコントロールしてフィジカルな感覚を入れるのと、半々ぐらいにしたいなと思っています。
まず、描くための装置を作り、その動かし方や線の出し方をチューニングするのですが、それさえ決まれば、画面ごとに大きなバラつきは出ません。展示している「Moment」より、今はもっと大きいサイズを描ける装置ができています。ずーっと見ていると目が回りますけど(笑)面白いですよ。
 
ア:映像で見るだけでも、自然で単純な動きのはずなのですが、ずっと見ていたくなる魅力があります。
名:平面にアウトプットしているのですが、どこか彫刻的な感覚が強いからでしょうか。彫刻というのはこの世界で、今自分がいる、今、感じているリアリティをそのまま形にするということなので、平面でも立体でも映像でも、彫刻的な感覚からどうやって作品化するか、という点を常に考えて作っています。物質的な条件やそのものの振る舞い、この空間に起こっていること、身体が今居る環境にあって受けている色々な影響や力を、可視化するのです。そのために、今この空間から現象を抽出し作り出すための方法は沢山あるのではないかと思っています。それは光かもしれないし温度かもしれないし重力かもしれない。
 
ア:普通の空間から要素を抽出するというのは、発想を大きく変えないと難しそうですが、作品のアイデアはどんな時に浮かびますか?
名:実験を繰り返していると、自然と次はもっとこういう風に、と展開していきます。
ア:ということは、「Moment」と「Direction」も関連して制作されたのでしょうか?
名:「Moment」は、3、4年前に制作した「LINE DRAWING」というシリーズからのアップデートが元になっています。そこに「Direction」の制作方法も影響して、最終的に「Moment」という絵画が完成しました。
「Direction」もまた、「LINE DRAWING」における様々な線の表現が派生して生まれたシリーズです。
 

東京都現代美術館[宇宙×芸術]展で展示中の「Moment」、「Direction」シリーズ
 

東京都現代美術館[宇宙×芸術]展で展示中の「Ether」、「Direction」シリーズ
 
ア:「Ether」のシリーズはどういったアイデアで作られているのでしょうか?
名:「Ether」は、実は、1998年のロンドン留学中に一度作ったことがあったんです。当時作った物は、外側を樹脂で覆ってしまって、水分が中に閉じ込められた彫刻でした。僕たちの身体は大部分が水分で占められているので、「水=命をもった存在の根源的な要素」であると考え、そのような彫刻を作りました。
「Ether」(エーテル)という言葉自体は、物理学や自然科学の分野が今ほど解き明かされていない時代に使われていた概念です。当時は、宇宙空間が真空だという議論と「感覚の媒質」になるようなもので満たされているという議論があって、その「感覚の媒質」をエーテルと名づけて扱っていました。今となっては半分オカルトのような話ですが、魂のやりとりや交信みたいなものも、このエーテルを介してなされているのではないかという議論もあり、科学的ではないかもしれないけど、アーティストの感性や感覚、コミュニケーションも、エーテルという概念に比喩的には近い部分があるなと思っていました。
 

「犬島「家プロジェクト」F邸 《Biota(Fauna/Flora)》」 撮影:表恒匡|SANDWICH
 
名:「Ether」が今の形になったのは、2013年に参加した犬島の「家プロジェクト」でした。F邸内にある坪庭に、植物が生まれてくる地面から鉱物のエネルギーが立ち上がるという設定で作りました。ちょうど「Direction」も精力的に描いていた時期で、キャンバスの上を流れていくインクの形がモチーフとなりました。粘度が高いインクが、床に落ちる時にゆっくりと広がる様子を5段階のストップモーションで3Dにシュミレーションし、上下反転させて組み合わせています。
上に上がる力と下に落ちる力とが常に同時に働く形になって、重力としてはプラスマイナスゼロになります。それで、見た時に無重力を感じるんです。
 
ア:確かに、「Ether」がいっぱい並んでいるところをみると、無重力空間に育った植物が浮いているような印象を受けます。
名:そうですね、植物は、全細胞が重力を感じていますよね。僕達もですけど、全細胞がセンサーをもっています。地面の下から上に伸びて行こうとし、光に向かおうとし、根は水分を探そうとしますよね。森などを見ていても、重力とは逆の方向にむかっています。実際の植物は無重力ではないけれど、重力に対して自由になろうとしているようにも見える。そういう上昇しようとする力のような、意志みたいなものが、作品の裏側にも感じられたらいいなと思っています。
ア:今後のご活躍も楽しみにしています。
 

 
以上、名和晃平さんのインタビューでした。
いかがだったでしょうか?静かに熱く語る名和さんの魅力が少しでも伝わったでしょうか。
暮らしている普通の空間を「宇宙の一部」と捉えて物質に向き合われているからこそ、普段は感じられない感覚になれる空間を作ることができるのだなと、感心しきりの時間を過ごさせて頂きました。
東京都現代美術館での「ミッション[宇宙×芸術]―コスモロジーを超えて」の会期は8月31日(日)までです。
 
東京都現代美術館「ミッション[宇宙×芸術]―コスモロジーを超えて」
 
 

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