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ギャラリー【OVER THE BORDER】スペシャリストと巡る旅【Cultra】で新しいアートを探るアートラボのBlogです 

目【め】ギャラリートーク@銀座資生堂ギャラリー

みなさんこんにちは、Art LABです。
先日こちらのブログでも紹介した展覧会「たよりない現実、この世界の在りか」のギャラリートークにお邪魔してきました。
8月3日、資生堂で行われた、アーティスト荒神明香さんと、ディレクター南川憲二さんによるトークの内容をレポートいたします。
これまでのお二人それぞれの活動紹介、「目【め】」としてのこれまでの活動紹介、そして現在開催中の展覧会「たよりない現実、この世界の在りか」について、という順番で進んだギャラリートーク。
親しみやすいエピソードを織り交ぜながらも、ところどころに繊細な感覚を元にした体験談や、作品の複雑な成り立ちを紹介する場面もある盛りだくさんの内容となっていました。

荒神明香さんのこれまでの活動紹介

まずは荒神さんからこれまでの作品のプロセスをお話されていたのですが、これが本当に、驚きの連続でした。作品に至るまでのきっかけとなった出来事がとても普通な出来事、あるいはとても繊細で小さな、すぐに忘れてしまいそうな発見であるにも関わらず、「それで、できた作品がこれです」と紹介される作品の印象の強さ、美しさに毎回驚かされ続けました。そのきっかけから、どうしてこうなるのか?分からないからこそ、荒神さんの作品がこれほど魅力的で、私達を惹きつけてやまないのではないでしょうか。


荒神明香さんの作品。左から<R.G.BB.G.R>、<reflectwo>
 
南川憲二さんの、wah documentとしてのこれまでの活動紹介
南川さんは「wah document」として、小学生をはじめとする色々な人から「やってみたい」ことを公募し、実行するという活動を行っていました。起こりそうにもない思いつきのようなアイデアが真剣に実行される様子を紹介するたび、会場は笑いに包まれました。

Wah documentの活動。
左から「先手」(横断歩道を待っている人を千手観音にしてしまうというもの)、「へび花火」(一万個のへび花火を同時に燃やす試み)

 
目【め】としての、これまでの活動紹介
それぞれ活躍していたお二人は、「目【め】」というグループとして2012年に活動を開始しました。
小豆島の「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」※1や、横浜の象の鼻テラスで行った鑑賞者参加型インスタレーション「FICTIONAL SCAPER」※2といった普通の日常から逸脱してしまう体験を逸脱するような試みを行っています。「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」では町の形や、家の形が頭の中で思い描く普通のものを超えてしまう空間体験を作り出し、「FICTIONAL SCAPER」では普段の自分ではない人生を演じ、公園の風景の一部にフィクションを生み出してしまいます。
いずれも「自分が自分じゃなくてもいい」という体験を試みることが根幹にあり、荒神さんにとっては小学生の時のある体験が元になっているそうです。それは、全校生徒全員で校庭に並んで撮影された時、ほんの小さくしか映らない自分の顔を想像して、普段は人見知りだったにも関わらず、精一杯の笑顔で写ってみようとした、という経験です。他の子と同じように写っているかのように見える荒神さんの写真は単なる笑顔ではなく、普段の自分を超えてみようと精一杯の笑みを試みた結果なのでした。
 
現在、目【め】のお二人は、宇都宮美術館の館外プロジェクトとして「おじさんの顔が空に浮かぶ日。」を行っています。荒神さんが中学生の時に見た夢(電車の中から、林の中に浮かぶおじさんの顔を見た)と、南川さんが文化事業プロジェクトについて町の人に話を聞いた際に「自分自身が参加する意味は、見つけられない」という意見が上がったことが元になり、町に住むおじさんの顔を集め、その中から一人の顔を空に浮かべようとしています。
 
また、現在開催中の横浜パラトリエンナーレに「世界に溶ける:リサーチドキュメント」として参加されている様子もご紹介頂きました。ヒアリングをもとに、自閉症の方が人に見せる為ではなく作った物や、行為した軌跡を公開するべきなのか、葛藤された経緯についてお話されていました。パラトリエンナーレでは、このリサーチを元にして目【め】のお二人が制作されたドローイングや写真が展示されています。(2014年9月7日まで開催)
 
「たよりない現実、この世界の在りか」展について
コンセプトについて、まとまってお話されていた部分をご紹介します。鑑賞される前の方にもネタバレにならない範囲で、この作品の核となる部分を抜粋しています。

荒神さん「幼稚園の時に、体操の時間に屋上で仰向けになる体操があり、その時に仰向けになるのが怖かったんです。目の前に空があって、なぜ空の方に落ちていかないのか、自分たちはなぜ地面に落ちないのか。落ちていかないか怖くて、隣にいる友だちの肩や背中が地面にくっついていることを確認しながらでないとその体操ができなかったという記憶があります。なぜ自分たちがここに留まっていられるかということをお母さんに聞いても、理由は分からないし、色々な情報を知れば知るほど不可解に思えて来た時に『自分が(空に)落ちない』ということを確かめることだけが、唯一、確かな真実だと気づいたのです。(中略)確かめなければ、何も無かったことになっていく。それが、自分たちの知覚している現実、この世界だ、と気づいて、そんな話を南川くんと一緒に、話していました」
 
南川さん「そういった、荒神さんの感覚をどうやって作品にするかが僕の役割になるのですが、最初に『体験させる』ことが良いのではないかと思っていました。鑑賞者の中に侵入するようなことができたらなと思うようになり、作品を組み立てていきました。」
 
荒神さんのお話は、どこかでそんな身体感覚が自分にも有るような気もしつつ、何のことを言っているのか分からないような気もしてきます。「確かめられたことだけが現実、確かめなければ、何も無かったことになる」というのは多くの情報に囲まれ、推測を重ねた前提の上で行動している日々の生活からは、逆に現実感の薄い言葉のようにも聞こえてきます。
しかし、訪れたことの無い場所に行く時、あるいは、今まで起こるはずの無かったことが起こった時、「自分の手で確かめられたことだけが現実、確かめなければ、何が起こるか分からない」状況を経験することになります。
いつもいる世界から離れて、自分の目と感覚だけを頼りに確かめ続けなければならない経験をしてしまうことで、これが「たよりない現実」だと、気付かされてしまうのかも知れません。
 
以上、ギャラリートークのレポートをお届けしました。
目【め】のお二人の絶妙なコンビネーションで笑いあり、真剣な表情ありのトークは初めて考えさせられたような話題も多く、とても充実した内容となっていました。今後の目【め】としての活動にますます注目していきたいと思いました。単純に楽しみにしている、というよりも、好奇心が抑えられずに注目してしまう、そんな魅力を持ったグループです。
「たよりない現実、この世界の在りか」展は8月22日まで銀座資生堂ギャラリーで開催中です。
 
※1「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」。小豆島の土庄本町に元から町にあった数軒の空き家たち(中には新しく作った空間も含むそうです)数軒が通常の玄関ではない、箪笥や冷蔵庫などから伸びる通路でつながっている作品。通路を出ると思いもよらない場所に出てしまう。入った場所と出る場所が全く違い、自分がこの町のどこにいるのか、混乱してしまうらしい。
※2「FICTIONAL SCAPER」この作品は多くの人が行き交う公園で、「自分ではない自分になる」という体験を5分だけすることができる、という参加型作品。難易度ややる気度をアンケートで確認後、用意された衣装を着て設定通りの人生を5分行ってもらう。「船長」や「植物研究者」、「式場から逃げてきた新婦」と「一緒に逃げている男性」など。
 
 

 
Information
「たよりない現実、この世界の在りか」
主催:株式会社 資生堂
会期:2014年7月18日(金)~8月22日(金)
会場:資生堂ギャラリー
〒104-0061東京都中央区銀座8-8-3東京銀座資生堂ビル地下1階
平日 11:00~19:00 日曜・祝日 11:00~18:00
毎週月曜休(月曜日が休日にあたる場合も休館)
入場無料
展覧会公式ページ(資生堂ギャラリー)
 
 
 
 
 

 

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