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ギャラリー【OVER THE BORDER】スペシャリストと巡る旅【Cultra】で新しいアートを探るアートラボのBlogです 

札幌国際芸術祭2014レポート2

先日レポートした札幌国際芸術祭2014、会期は9月28日で終了してしまったのですが、
芸術祭の終幕後も楽しめる、札幌ならではの経験をした!と心に残る空間と作品をご紹介いたします。
 
モエレ沼公園
 

 

 

 
イサム・ノグチのデザインで造られた公園は言わずと知れた名スポットですが、驚きの経験になること間違い無しです。
こんなに絵に描いたかのような山形の「モエレ山」にあっと言う間に登り、広い視界に圧倒される山は自然の多い札幌でも、他には無いのではないでしょうか。
不燃ごみと公共残土で造られた人工物というからなお驚きです。
身体のスケール感を変えてしまう公園は、札幌の中心街から車で30分ほどの場所にあり、市民から親しまれています。
 
赤れんが特別展示
明治21年に建てられた煉瓦づくりの建築、北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)の中では芸術祭期間中、赤れんが特別展示「伊福部昭・掛川源一郎」展が行われていました。
展示は終了しましたが、赤れんが庁舎は普段から一般公開され、ガイドの方から説明を聞くこともできます。
 

 
こちらの会場で行われていた特別展示はこの歴史ある庁舎にふさわしい、北海道ならではの貴重な内容でした。
ゴジラの映画音楽でも知られる、釧路市が輩出した作曲家、伊福部昭に関する展示では直筆の楽譜や本人の手紙や原稿などの資料が展示されていました。
もう一つの展示空間では、室蘭市生まれの写真家、掛川源一郎の写真や資料を見ることができました。
掛川源一郎の写真の中ではアイヌ民族の儀式や、入植者たちの姿が生き生きと写しだされていました。
 

《シマフクロウのイオマンテ》写真文化首都 北海道「写真の町」東川町蔵
空間デザイン:オリバー・フランツ(silent.代表)©掛川源一郎写真委員会
提供:創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会 Photo:Keizo Kioku
 
土門拳のリアリズム写真に影響を受けて写真を始めたと言う掛川源一郎の写真群には、北海道の土地の様々な光景のありのままが収められています。
入植者として北海道に生きる家族を24年間に渡って撮影した写真群や、アイヌ民族の儀式を写しだしたものなど、北海道に生きた人々の様子がありありと記録されています。
1900年代以降途絶えていた儀式を、9年の構想期間を経て1983年に再現した際の「シマフクロウのイオマンテ」という写真群からは、長らく途絶えた儀式の復活の瞬間に立ち会う緊張感が伝わってきました。
こうした伝統が息づく土地だと意識することで、札幌の街が他のどの土地とも違う特別な顔を持っているように感じます。
 
松江泰治による「JP-01 SPK」
 
次にご紹介したい、札幌ならではと感じた作品がこちらです。
 

松江泰治<JP-01 SPK>2014 © TAIJI MATSUE Courtesy of Taro Nasu
提供:創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会 Photo:Keizo Kioku
 
松江泰治の写真は、各地を地表として俯瞰、あるいは情報を集積する目的として撮影したかのような視点で捉えます。
均一な光で影を排除し、フレームの中に地平線の無い写真はただただそこにある、「事実」として存在します。
こうした視点で知っている街を見ると、どのように見えるのでしょうか。普段意識することのできない視点を得ることでできる経験こそ、芸術の醍醐味です。
 
こちらの写真が収められた「JP-01 SPK」という札幌の都市を表すコードを題にした写真集は現在赤々舎から発売中です。
写真集で見た場所に訪れてみるのも、意外な驚きに溢れる経験になるかも知れません。
 
以上、札幌国際芸術祭2014の終幕後も楽しめるスポットや作品をご紹介いたしました。
何度でも訪れたくなる札幌の、アートな視点を持った旅にお役立てください。

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札幌国際芸術祭2014レポート

みなさんこんにちは。
今年初めての開催となった札幌国際芸術祭2014にArtLABも駆け込みで取材に行ってまいりました。
初めて北海道に降り立ち、札幌という土地に全く疎いスタッフが短い時間の中で芸術祭を堪能すべく、メイン会場のみを駆け足で回った鑑賞記録をレポートいたします。

 
羽田空港からおよそ1時間半、あっという間に新千歳空港に到着します。
新千歳空港から札幌都心行きのバスを利用し、順調に道立近代美術館へと到着いたしました。

北海道立近代美術館は1977年に札幌の中心に開館した、市民に親しまれる美術館です。
清潔感のある外観に一歩入ると、意外にも重厚な雰囲気が広がっています。
少し時代を感じさせるとともに、ほっとする雰囲気があるエントランスです。

札幌国際芸術祭のメインとも言えるであろうこちらの道立近代美術館、稀に見る質の良い作品展示を見ることができました。
まず印象深いのがこちらの作品。
インド人アーティスト、スボード・グプタによる「ライン・オブ・コントロール(1)」です。

雑多な物で形成された禍々しいきのこ雲のようなこの作品は、主にステンレスの日用品で構成されています。
伝統的に用いられてきた真鍮や銅の食器や儀式用の品々に代わって、日常を独占するステンレス用品で作られたきのこ雲は重厚感のある近代美術館の中で、静かに佇んでいました。
かなりストレートに社会問題に言及した作品ですが、食器たちが丁寧に積み重ねられているからなのか、意外にも物体としての魅力に溢れ、いつまでも眺めていたくなるような温かみもある印象を受けました。
 
そしてもう一点、すぐ隣にあるアンゼルム・キーファーによる「メランコリア」もまた、この吹き抜けの空間で遺憾なく魅力を発揮していました。

通常、福岡市美術館で所蔵されているこちらの作品は、札幌国際芸術祭という文脈において、という以上に作品自体の力で道立近代美術館でも様々な時間の流れや歴史についての風格を漂わせているのを感じました。
 
2つの大きな作品を後にして螺旋階段を登ったところに、畠山直哉の写真群が待っていました。


 

 

最盛期を通り過ぎた炭鉱の町を撮影した写真たちは、正に「近代」を捉えた展示です。
こちらの壁面も吹き抜け部分に面しており、厚みのある美術館の建物と写真の内容が同じ方向を向いているような、展示空間の完成度を感じました。
 
この後、突然雪の結晶を作る明るい実験室にたどり着きます。
カールステン・ニコライによる「snow noise」は人工雪を作る様子を展示しています。
カールステン・ニコライはこの後訪れる芸術の森美術館で全く別の作品を展示しています。そちらでは鏡面に囲まれたプロジェクターで激しく明滅する映像体験をすることになるのですが、こちらでは静かに雪が結晶を実らせていく姿を観察することができます。
 
この後、中谷宇吉郎の研究成果である雪の結晶、火花放電の写真展示を高谷史郎が手がけた展示に連なって、高谷史郎本人による、中谷宇吉郎へのオマージュ作品「Ice Core」も展示されていました。

 

この作品は中谷宇吉郎の回顧展がラトビア国立自然史博物館で開催された際に、展示された作品ということです。
中央、上から下に流れていく白い物体は2005年に掘削された氷床コアの一部で、右側の数字はその氷がもといた深度(単位:mm)を表し、左側の数字はその氷の年代(単位:○年前)を表しているそうです。
自然科学的な資料を羅列されているだけにも関わらず、映像に目が釘付けになってしまうかっこ良さはさすが、としか言いようがありません。
 
かなり駆け足でしたが近代美術館の展示についてのご紹介は大まかに以上となります。
大御所作家の有名作品を一度に見ることのできる特別な様子を目の当たりにし、札幌国際芸術祭、なかなかやるな・・・。という印象で今度は次なるメイン会場、札幌芸術の森美術館に向かいます。
 
札幌国際芸術祭開催期間中は、近代美術館から無料のシャトルバスが出ています。バスに揺られること約40分、かなり都会の中心からは外れたな、、という心細さも募る頃、札幌芸術の森美術館に到着します。
芸術の森美術館に着いた瞬間にここが試される大地であることを思い知らされます。
とにかく、寒いです。これから訪れる方、大げさじゃないか、という服装で挑んでください。
都合により遅い時間にスタートしたため向かっている途中で日が暮れてしまい、外観等の写真を撮ることができませんでした。
 
さて、最初にご紹介するのはエントランスのすぐにある、砂澤ビッキの作品、「風に聴く」です。
 

 
普段、現代美術館などを訪れているとあまり目にすることのない種類の作品ですが、素朴な風合いに意外にも惹かれるものがありました。何か実用的な道具のような、あるいは手を差し伸べてくる人の形のような、4つの木彫があちらこちらを向いている様子が可愛らしく感じる経験はあまり無かったので不思議な感覚です。
 
この後も森林に関する作品が続きます。
 

平川祐樹さんによる「Vanished Forest」は、見ての通り、頭上には森林を見上げたような映像が並び、覗きこむ形で切り株の映像が展示されています。
切り株の上にはキノコが生えたり蟻が這っていたりするのですが、肝心の樹木の幹が喪失している状態が作り出されています。
この作品の展示されている芸術の森美術館は、その名の通り森の中にあり、樹木に囲まれた場所にあるのですが、その建物の中で森林が喪失されたことがテーマの作品が展示されている、という状況にも不思議な感覚を覚えます。
 
そして宮永愛子さんの「そらみみそら(mine・札幌)」では、突然繊細な陶器が床に、そして錆びついた滑車の上に並べられています。
 

 
こちらの作品は、高温で焼きあげられた釉薬が冷やされていく過程でヒビが入る時に鳴る音の展示する、サウンドインスタレーションなのですが、いつ鳴るのか、その音を聴くことができるかは全く予想ができません。
その場にいらした美術館の方に、ヒビが入る(貫入)の音がどんな音なのか、詳しく根堀葉掘り聞き、しずしず周囲を歩き回り、それでも鳴らないので諦めようとした時に、ついに聴くことができました。釉薬にヒビの入る音は確かに細やかなのですが、意外にも力強い音がしました。固まりつつある釉薬を割る力が、徐々に徐々に溜まっていっていたものが爆発した瞬間に立ち会えたことがとても嬉しかったです。また、それまでの静かな空間の中にも、次に聞こえてくる貫入の音までの力を溜め込んでいる運動が行われているという想像を巡らせて初めて、札幌に流れる水の由来と都市の歴史がモチーフになっているということが理解できた気がしました。
 
松江泰治さんは「JP-01 SPK」というタイトルでそれぞれの季節の札幌の町を精密かつ均質に写した写真群を展示しています。
また、写真の向かいには、この写真がじわじわと動いて上空を移動しながら町を眺めているような気分になる映像が展示されていました。
 

 
地元の方と思われる方々が、食い入るようにこの写真たちを見つめ、被写体となっている景色に身近な建物や場所を見出しているのを目の当たりにすることで、より感慨深い作品でした。札幌や北海道に関連の深い作品が多く展示されていたので、きっと地元の人々は、観光客として外からやってきた私達とは違った感想を持つのだろうな、と、想像を膨らませました。地元の人たちにとって、今回の札幌国際映画祭2014は、どんな芸術祭だったのでしょうか。そんな視点を持つことも持つこともできます。
 
最後にしっかりと中谷芙二子さんによる霧の彫刻を見ることもできました。

 

旅行者の視点で味わう札幌国際芸術祭も、他では見られない良質な体験ばかりでした。
 
以上、北海道立近代美術館と札幌芸術の森美術館、二つの会場で札幌国際芸術祭を鑑賞したレポートでした。
訪れた方も、今回は逃してしまう方も、少し雰囲気を味わって頂ければ幸いです。
東京近郊で行われるアートフェスとはまた違った印象を受ける体験となりました。
札幌という土地ならではの文脈のある作品、そして東京近郊では中々見られない規模の美術館は、今回の札幌国際芸術祭の終了後も再び訪れたいと思う場所ばかりです。
 

 
Information
札幌国際芸術祭 2014
主な会場:北海道立近代美術館、札幌芸術の森美術館、札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)、北海道庁赤れんが庁舎、モエレ沼公園 ほか
※各会場ごとに開館時間(作品鑑賞時間)・定休日が異なります。詳しくはアクセスのページをご覧ください。
会期:2014年7月19日(土)〜 9月28日(日)
 
 
 

 
 
 

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